グーグルの「閲覧データ」提供停止でネット広告はどうなるの?


先月、グーグルは同社のブラウザ「クローム」で、ユーザーのネット閲覧履歴のデータが第三者のネット広告会社などに提供される仕組み「クッキー」を、2022年までに段階的に停止すると発表した。やっぱり来たか!と慌てたネット広告会社も多かったかもしれません。なんせクロームは世界シェア約6割を占めるので、その影響はかなり大きいしね。

 

しかし、端末メーカーとして「ユーザーのプライバシー保護」の姿勢を強調していた「孤高」のアップルの「サファリ」は、すでに広告用にクッキーが使えないようになっている。まあ、広告ビジネスが主戦場であるグーグルとしては後追いということなりますね。

 

この流れは、欧州の一般データ保護規則(GDPR)や、昨年1月に施行された米国カリフォルニア州消費者プライバシー法(CCPA)、日本では個人情報保護委員会もクッキーに関する規制を今後強化する方針なので、今後世界で個人情報保護をとりまく規制は厳しくなる一方です。

 

もっとも、クッキーには2種類あって、ログインのためにサイトが発行するクッキーを「ファーストパーティクッキー」といい、今回クロームで利用できなくなるのは、広告配信業者がサイトにタグを埋め込んで収集する「サードパーティクッキー」と呼ばれるもの。

 

このサードパーティクッキーは、ユーザーの興味や関心、属性を分析するために活用されるようになっていわゆる「ターゲティング広告」が開発され、「これだー!!」と多くの広告主が飛びついたんだよね。なんせ1人ひとりの閲覧履歴が丸見えなんで、広告主のサイトに一度でも訪問したらこれでもか!と繰り返し広告を配信する「リターゲティング」も可能になったんだよね。

 

そりゃピンポイントにユーザーを追跡できるので広告効果は高いし、広告主は我先にリターゲティングをやるようになったという次第。そう、あの、いやらしく追っかけてくるやつです。はっきり言ってこれは広告ではなく「押し売り」と同じですがね。。

 

このサードパーティクッキーが使えなくなれば、そのえぐい「リターゲティング広告」ができなくなるので、グーグルは今後も広告ビジネスで稼ぐために、現在、クッキーに代わるターゲティングや効果測定の機能を広告事業者向けに開発中とのことで、集団単位でのターゲティングに注力するらしい。

 

また広告会社各社も今後はこのクッキーに頼らない「ターゲティング広告」の手法を開発中らしく、例えばAI(人工知能)がページ内の画像やテキストから分析し、動的判断で追跡できるよう開発しているところもあると聞く。いずれにしても、今後ネット広告のあり方自体、大きく変革を迫られそうです。

 

しかし、検索やEメール、動画、地図など、自社サービスでユーザーから多くのデータを集めているプラットフォーマーは、やはり今後も勢力を増ていくでしょう。

 

ということは、これからは広告主も「自社サイトで有効なユーザーデータを集める」方向に注力せざるをえなくなるでしょう(けっこうテレビCMなどのオフライン広告との連携を強化するかもしれませんね)。